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心底投げやりなグミ落語 後生鰻編

 

あるところに年老いた隠居がいた。

 


心優しい彼は、自らの血を吸いに来た蚊でさえも
はたくのを躊躇したほどだった。


「全ての生き物には、正しく飯を食う権利があるだよ」

 


ラブアンドピースを掲げる彼は、その昔ヒッピー生活に没頭したとかしないとか。

 

ある日民家の家を通りがかると、この家に住む男が

カエルを頭から呑み込もうとするところだった。

 


「おう、お前さんカエルを丸ごと食うとはなんと野蛮な」


「これっすか?これカエルですけどグミですよ。てか誰だよ」


「なわけないだろ、どう見たってカエルはカエルだよ」

 

「アンタみたいな集落に籠って生活してそうな奴には分からんかもしれんが
いまの技術は大層発達してるのだよ。てか誰だよ」


「うるさい!無駄な殺生は許すまじ!いますぐそのカエルを放すがいい」


「(やべーヤツだわこれ・・・)放します。すいません」

 

 


男は観念して、家の前を流れる川にカエルのグミを放り入れた。

 


「いやはや、良い功徳をした」

 


隠居は満足げに川の上流にある自宅へと帰って行った。

 


川の下流には、カエルを食おうとした男の子どもが遊んでいた。

 

 

「おーい、今からグミ流れていくから食っていいぞー」


父親からのおやつを子どもは面白がって食べていた。

 

 


そんなやり取りを何度か繰り返したが、ある日隠居ははたと姿を見せなくなった。

 


「お父さん、最近『流しグミ』やらないの?」

 

「いいんだけど変なヤツに絡まれない限りやりたいとは思わんわ」

 

 

 


しかし数か月後、隠居は再び彼ら一家の前に現れた。


「昼下がりの散歩はボブ・マーリーに限るわ」

 


ここぞとばかりに男はグミを探しに家に戻るが、

なんと不幸な、昨日食べ切ってしまったばかりではないか。

 

代わりに男は、飼っていた本物のカエルをおもむろに口に運ぶしぐさを見せた。

 


「貴様、カエルには素晴らしい跳躍力、命の輝きがあると何度いったら!」

 

「すんません、流しまーす」

 


川を泳いでいくカエル。


鼻歌を鳴らす隠居。


下流の子どもは飛んでいったボールを追いかけていなくなっていた。

 

 


数年後。


子どもは理系の大学に通う立派な大人になった。

 


カエルは自然に帰ったようだ。


ヤベー隠居もどこかにいった。

 

 


「いい功徳をした」


カエルのグミを食べながら、男はつぶやいた。