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たまにある壮大なグミレビュー 無印良品『果汁100%グミ イタリア産マスカット』編

 

私が六本木のバーで働いていた頃、決まって土曜日の夜遅くにやってくるお客さんがいました。

 


その人は短めのベージュ色した髪をナチュラルに固め、瞳は青く美しく、くっきりと浮かぶ目鼻にうっすらと生やした髭が魅力的な男性でした。

 


他人の顔を覚えるのが苦手な私でも3回ほど店に来たときは、『あ、あの人だ』とときめきに胸を突かれたものです。

 


そう、あの頃の私は彼に夢中でした。

 


「六本木にはよく来られるんですか?」

 


テーブルを拭くフリをして彼に近づくと、思わず私は彼に話しかけていました。

 


「私、近くのお店でバイトしてる。イタリアからの留学生」

 


まだ拙い日本語でそう言うと、日本の窮屈な喧噪に疲れた表情と、これからの未来に心躍らせる表情が入り混じった顔で私を見つめました。

 

 

 


それからというもの、私たちは少しづつ言葉のキャッチボールを増やし、その会話はやがて、キラキラに忙しない六本木の街を飛び出しました。

 

 

 

初めてのデートは夏の始め。握る手に少し汗をかきながら、彼の後をついていきました。

 

背中から見る彼の身長はとても大きく、私の頭のてっぺんは肩ほどまで届きません。

 

 

ホテルでその大きな体に抱きしめられ、私の生きてきた世界の小ささを、幸せとともに噛み締めたのです。

 

 

 

 


でも、彼はいなくなりました。

 

 


『いままでありがとう。私の一番好きなものを贈ります』

 


この夏をもって留学を終える彼は、私にメッセージ一つ残してイタリアに帰りました。

 

 

彼の在籍するイタリアの大学はとても優秀で、日本の政治の仕組みを学びに来ていたのです。

 


後日私の家に届いたのは一房のマスカット。

 


『種を植えてください。実がなるころ、私は迎えに行きます』

 


同封された手紙には覚えたばかりの漢字を混ぜて、そう書いてありました。

 

 

 

一緒に勉強したね。上手になったね。

 


また彼に会いたくて、マスカットの種、ベランダで大切に育てたけど、一向に芽が出る気配はありません。

 


プランターが、私が、小さすぎたのかな。

 

 

 


土曜日の夜、私はいつも泣いています。

 


無印良品 果汁100%グミ イタリア産マスカット32g』を手にして、私はいつも泣いています。