一陣の風が吹き抜ける。
男が3人。もう片側にはやはり男が1人で向かい合っている。
砂埃が舞った。
「決着をつけるときが来たようだな」
3人の真ん中に立つ男が呟いた。
その男の脳裏には、過去の記憶が鮮やかに映し出されていた。
・・・
『怖いものは全部食べてしまおう』
『いやはや、旨すぎて怖いなこりゃ』
『ここらで一杯お茶が怖ぇや』
・・・
・・
・
「昔のことは、ここに全て捨てていく」
男は自らにそう言い聞かせる。
風が、止んだ。
「覚悟しろ!」
右端にいた男が叫びながら取り出したのは大量のグミ。
「甘じょっぱいまんじゅうが怖けりゃ、とことん甘くしてやる!」
「砂糖と水飴に溺れやがれ、あと太れ!」
3人の男達は跳びかかりながらグミを投げつける。
色とりどりの放物線が虹のように両陣の間を架かる。
「・・・」
グミ攻めにあった男は、瞬く間にグミに埋もれた。
「やったぞ、コイツが本当に怖いのはグミだ!」
「え、グミって甘いけど案外太らないの?」
「おととい来やがれバーロー」
3人の男達は歓喜の声を上げる。
その横で、男が埋もれたグミの山がゆっくりと動き始めた。
蟻地獄に吸い込まれる砂のように、一点が強く重力に引き付けられ、やがて男の顔が現れた。
唖然とする3人。
グミを咀嚼しながら男はゆっくり笑ってこう言った。
「お茶飲んだ後だし、とびきり甘いものが怖ぇや」