夏空と炭酸と高校生。
なんと王道な組み合わせ。
そんなコマーシャルをよく目にする季節になってきた。いやはや6月。
潮の香り漂う夏の気配が、鼻先くらいをかすめながら
サイダーとコーラはなぜいつもセットなんだろう、と疑問に思いつつ
「UHA味覚糖 むっちりグミ 横浜サイダー&コーラ」を手にする。
<むっちり>とは何と官能的な響きであろう。
飲食物にこのネーミングとは、なかなか度胸のいることだ。
命名した担当者は、そこはかとなくグミを咀嚼することに対して
エロスを感じているに違いない。
開封すると、やや大きめの粒が見える。
クラシックな瓶ジュースを模したデザインに、
透明に近い茶色とサイダー味は青、コーラ味は赤のバイカラー。
ファッションにおいてバイカラーを着こなしている人はお洒落
という私なりの固定観念があるのでこのグミも漏れなくお洒落。
そんなお洒落グミを口の中に放り込み、<むっちり>を堪能する。
・・・
いや、わりとハードだ。
違う、これがグミ的なむっちりであり、
むっちりに若干のエロさを感じてたのは、
身勝手ながら、恥ずかしながらこちら側の都合だったのではないか。
これはやられた。
そう思いながら数粒食べているうちに、
「こんなもんでしょ」と、食感に対し特にハードとも思わなくなった。
受け手にイメージを膨らませて、かつ現実が見えたときの失望感が無い。
なんて緻密に練られたネーミング戦略だろうか。
何粒かむっちりをつまみながらパッケージを眺めていると、
横浜サイダーの誕生小話とともにサイダーの語源が
リンゴ酒であることを紹介している。
小さな気付きを与える仕掛けもある洗練された商品だ。
サイダー味・コーラ味といっても炭酸特有のシュワシュワした感じはしない。
学生の頃、炭酸が飲めなかったのを思い出した。
(今も特別好きというわけではないが)
いつか見たコマーシャルみたいに、
突き抜ける青空の下で、美少女を傍らに炭酸を呷ってみたかった。
炭酸も飲めなければ、美少女もいないし、トータルで見れば曇天がちな私の学生時代。
だからいつまでも<むっちり>に囚われてるんだよ、
とパッケージからつぶやきが聞こえた気がした。